歌舞伎座の6月公演昼の部で片岡仁左衛門主演の「女殺油地獄」が上演されている。仁左衛門さん自身は「これは若い人がやった方がいい役だから」と10年前に、これきり最後と言って上演した。でも、今回は歌舞伎座のさよなら公演でどうしてもと請われて「もう、ほんまに最後です」と言って今月上演している。片岡孝夫時代の当たり役として有名なこの演目、わたしは観たことがなかったので、この最後のチャンスにどうしても観たかった。チケットは気がついたときには、全日売り切れ(夜の部は全日残ってるのに^^;)。なんで、初めて一幕見に挑戦した。
念のために1時間以上前に行ってみると、すでに長い行列が! 係の人に聞くと、その更に1時間前から並び始めていたらしい。「女殺〜」は4幕目。そのときは丁度3幕目の「蝶の道行」の一幕見の受付が始まろうとしていた。聞けば3,4幕分のチケットを一緒に買うこともできるし、すでに立ち見で、もうすぐ札止めだとも言うので、この際だと思って3幕目から観ることにした。
一幕見の席は急な階段を登って4階。座席はすでに一杯でその後ろに立ってみるスペースがある。立つ場所も2列あり、前列は手すりにちょっと寄っかかれるようになっていて、後列にはひな壇があってそこに立って壁に寄りかかれる。前回座った花道に近い側の3階端っこの席は、花道も舞台の左側も見えず、かなりいらついた。今回の方が遠いけれど、舞台は全体を見渡せ、花道はほとんど見えないけれど、役者が最後の見得を切るあたりまでは何とか見える。ただし、わたしが立った位置の頭のすぐ上にエアコンがあってうるさくて、役者の声がちょっと小さいとセリフが聞き取れない。立ち位置は吟味した方がいい。
よく知らずに観た舞踊「蝶の道行」が、とても美しかった。生前に結ばれることのなかった恋人たちが蝶になって春の野を舞う明るい前半と、地獄の責め苦に遭って悲劇的な最期を遂げる後半の対比が面白い。舞台は春の野ということで、2人が蝶のサイズに見えるよう、たくさんの大きな花が描かれている。でも、描かれている花が夏や秋のものが多いのはなんでやろ。
お目当ての「女殺〜」はやはり面白かった。浪速のアホぼん・与平が口からでまかせ、見栄の張りっぱなしで、とうとう商売仲間で身内同然の付き合いをしていた家の奥さんを手にかけてしまうまでを描いたお話。1度は改心するかに見えたアホぼんが殺人にいたるまでの急展開と、暗闇で油まみれになって転がりながら手を下す場面は、一瞬で芽生える殺意と緊張、無我夢中で飛びかかり、次第に殺しに快楽すら感じ始めるのに、いざ殺してしまうと急に恐ろしくなる与平の変化がよくわかる。ここの部分の音楽も秀逸。どんなアホでも見捨てられない切ない親心を描く部分も見どころ。性根の腐ったアホやけど、なんかどっか憎みきれず、色気のある男やった。仁左衛門さんは「こういう若さを出す演技はもう疲れるんです」と言ってはったけど、うちはこのチャンスを得られてほんま良かったと思う。2時間半立ち見はさすがにしんどかったけど。
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