2009年06月18日

女殺油地獄、空気人形

女殺油地獄歌舞伎座の6月公演昼の部で片岡仁左衛門主演の「女殺油地獄」が上演されている。仁左衛門さん自身は「これは若い人がやった方がいい役だから」と10年前に、これきり最後と言って上演した。でも、今回は歌舞伎座のさよなら公演でどうしてもと請われて「もう、ほんまに最後です」と言って今月上演している。片岡孝夫時代の当たり役として有名なこの演目、わたしは観たことがなかったので、この最後のチャンスにどうしても観たかった。チケットは気がついたときには、全日売り切れ(夜の部は全日残ってるのに^^;)。なんで、初めて一幕見に挑戦した。

念のために1時間以上前に行ってみると、すでに長い行列が! 係の人に聞くと、その更に1時間前から並び始めていたらしい。「女殺〜」は4幕目。そのときは丁度3幕目の「蝶の道行」の一幕見の受付が始まろうとしていた。聞けば3,4幕分のチケットを一緒に買うこともできるし、すでに立ち見で、もうすぐ札止めだとも言うので、この際だと思って3幕目から観ることにした。

一幕見の席は急な階段を登って4階。座席はすでに一杯でその後ろに立ってみるスペースがある。立つ場所も2列あり、前列は手すりにちょっと寄っかかれるようになっていて、後列にはひな壇があってそこに立って壁に寄りかかれる。前回座った花道に近い側の3階端っこの席は、花道も舞台の左側も見えず、かなりいらついた。今回の方が遠いけれど、舞台は全体を見渡せ、花道はほとんど見えないけれど、役者が最後の見得を切るあたりまでは何とか見える。ただし、わたしが立った位置の頭のすぐ上にエアコンがあってうるさくて、役者の声がちょっと小さいとセリフが聞き取れない。立ち位置は吟味した方がいい。

よく知らずに観た舞踊「蝶の道行」が、とても美しかった。生前に結ばれることのなかった恋人たちが蝶になって春の野を舞う明るい前半と、地獄の責め苦に遭って悲劇的な最期を遂げる後半の対比が面白い。舞台は春の野ということで、2人が蝶のサイズに見えるよう、たくさんの大きな花が描かれている。でも、描かれている花が夏や秋のものが多いのはなんでやろ。

お目当ての「女殺〜」はやはり面白かった。浪速のアホぼん・与平が口からでまかせ、見栄の張りっぱなしで、とうとう商売仲間で身内同然の付き合いをしていた家の奥さんを手にかけてしまうまでを描いたお話。1度は改心するかに見えたアホぼんが殺人にいたるまでの急展開と、暗闇で油まみれになって転がりながら手を下す場面は、一瞬で芽生える殺意と緊張、無我夢中で飛びかかり、次第に殺しに快楽すら感じ始めるのに、いざ殺してしまうと急に恐ろしくなる与平の変化がよくわかる。ここの部分の音楽も秀逸。どんなアホでも見捨てられない切ない親心を描く部分も見どころ。性根の腐ったアホやけど、なんかどっか憎みきれず、色気のある男やった。仁左衛門さんは「こういう若さを出す演技はもう疲れるんです」と言ってはったけど、うちはこのチャンスを得られてほんま良かったと思う。2時間半立ち見はさすがにしんどかったけど。

終了後、速攻で渋谷へ。今日は是枝裕和監督の新作『空気人形』の記者会見とさらに舞台挨拶&完成披露試写があった。大好きな是枝作品な上に、実は日本で一番好きな俳優ARATAと、韓国で一番好きな女優ペ・ドゥナと、最近一番気になる芸人板尾創路が出演しているとあっては、否が応でも期待してしまう。今日は4人が登壇するというので楽しみだった。
ところが、行ってみるとペ・ドゥナが来られなくなったという。原因は千島列島の火山噴火による噴煙被害でニューヨークから乗るはずだった飛行機が欠航したため。別の便でこちらに向かっているけれど、記者会見には間に合わなかった。韓国エンタメ系の記者たちは明らかに落胆。そりゃそうだわね。舞台挨拶にはもしかしたら間に合うかもしれないけれどわからないとのこと。舞台挨拶へ行くと明らかに取材陣減っていました。諦め早いなぁ。皆さん忙しいからか。ところが・・・ 間に合ったんだな、ペ・ドゥナちゃん。舞台挨拶の途中で、必死に駆け込みの状態で。いやはや、ご苦労様です。こちとら待てば甘露の日和ありです。

カンヌ映画祭でワールドプレミアをした後、更に編集を加えて昨日ようやくできあがったばかりだそうで、まさしくこの日は完成披露試写会だった。

そして作品は、

ファンタジーなのですが、衝撃的なせつなさでした。
空っぽのはずなのに心を持ってしまった人形(ラブ・ドール)が、愛と死、生と性を知って、取り残されたような街に住む空っぽな人間たちにほんの少しの奇跡を残していきます。
役柄の性質上、全裸のシーンも多いペ・ドゥナですが、細く長い手足が本当にお人形さんみたいで、猥雑な感じが全然しない。衣装もそのスタイルを際だたせた可愛らしいもの。ユーモアがあって笑ってしまうところも随所にあるのだけれど、彼女が世界に夢中になって動き回ればまわるほど、観ているこちらは切なさの痛みが増す。
ロケ地が築地の川の方で、その独特な風景が非常に印象深く、今度探しに行ってみようと思う。李屏賓が撮した映像と自分の肉眼で見る映像がどのくらい違うものか見てみたい。

posted by amui at 23:35| Comment(5) | TrackBack(1) | 日本電影 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
歌舞伎お疲れ様でした。
是枝作品、期待しちゃうな〜。
ペ・ドゥナさん、偉いな〜。
充実した1日で何よりでした。
Posted by sh at 2009年06月19日 19:04
『女殺し〜』は雷蔵さんの映画で見たっきりです。立たないで観る方法はないものか。
次のシネマ歌舞伎『牡丹灯篭』は仁左衛門さん、玉三郎さんです。これも期待。
『空気人形』はトロント映画祭のマスター部門に出品決定だそうです。

業田さんの「ロボット小雪」を読んだところです。これも心を持ってしまうロボットの話。絵がわりあいシンプルなせいか、そんなにグーッとは来ないです。実写になるとずっと切なそうだなぁ。
Posted by 白 at 2009年06月25日 19:08
今週末までですから、難しいでしょうねぇ。一応、今回の「女殺〜」の舞台はNHKで放送するそうです。
Posted by amui at 2009年06月25日 19:43
雷蔵で「女殺〜」なんてありましたっけ?
Posted by amui at 2009年06月25日 19:46
あ〜、違った。私が観たのは扇雀さんだったわ。これが雷蔵さんだったら良かったのに、と勝手に脳内変換していました。失礼をば。

NHKで放送するまで待つことにする。
Posted by 白 at 2009年06月26日 14:39
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「空気人形 」ワタシのナカミはカラッポです
Excerpt: 「空気人形 」★★★★オススメ ペ・ドゥナ、ARATA、板尾創路主演 是枝裕和監督、116分、2009年、2009-09-26公開                     →  ★映..
Weblog: soramove
Tracked: 2009-10-03 19:29
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