2009年06月24日

マン・オン・ワイヤー、ラッシュ・ライフ、精神

『マン・オン・ワイヤー』監督:ジェームズ・マーシュ、出演:フィリップ・プティ、2008年、イギリス、テアトル・タイムズ・スクエア

今はなきNYの世界貿易センタービル(ツインタワー)の間にワイヤーを張って綱渡りをした男、フィリップ・プティのドキュメンタリー。このビルの建設計画の新聞記事を見た瞬間に、「ここで綱渡りをしたい!」という思いに取り憑かれてしまったというから、尋常じゃない。警備が厳重なビルに忍び込んで実行する計画は、まるで銀行強盗でもしにいくかのよう。天空に張られた1本のワイヤーの上を人間が歩き、寝そべる姿は、何とも言えず不思議で優雅な光景だった。
現在のフィリップ・プティとこの計画にたずさわった仲間たちへのインタビューと、再現映像で綴られている。ハイテンションでよく喋るフィリップと彼を支えた仲間の様子の温度差が興味深い。このことで一躍時の人となったフィリップだが、一方で妻とも仲間とも絆が壊れてしまったらしいことが見て取れる。人間、すべてを手に入れることは難しい。

『ラッシュライフ』監督:真利子哲也、遠山智子、野原位、西野真伊、出演:堺雅人、寺島しのぶ、柄本佑、板尾創路、2009年、日本、新宿バルト9

伊坂幸太郎の小説を、東京芸術大学の学生たちが映画化した作品。小説の方は、まったく関係がないと思われた人物たちの人生がある点で交差するときの快感が気持ちよかった。映画はほぼ原作に忠実だけれど、4人の中心人物ごとに4つのパートに区切られていて、それぞれを4人の監督が担当するため、全体が1点にすっと収束する感じがない。4人監督でもバラバラにはならず、トーンが統一していたのは良かったけれど。
東京の学生が撮ったため、原作では仙台が舞台だったが、ロケは横浜近辺で行われていた。ロケハンが甘い。人がいて欲しくないシーンで、人や車の気配がある。港で拳銃を撃つシーンも、対岸がみなとみらいで人が一杯いる。そんなところで発砲するか?

『精神』監督:想田和弘、出演:「こらーる岡山」のみなさん、2008年、日本、シアター・イメージフォーラム

『選挙』の想田監督観察映画第2弾は、山本昌知先生が開く「こらーる岡山」へ集う精神病患者たちを観察する。鬱状態で死にたいと泣く女性。頭の中で声がするという女性や頭の中にインベーダーがいるという男性。まじめさが暴走して時折システムダウンしてしまう男性。
きっとこの方たちは、ものすごくまじめで社会に対する責任感が強いのではないだろうか。自分をふり返ると、中学生ごろまではいつ死んでもおかしくない状態だった。今だって頭の中で声がするのはしょっちゅうだし、ときどき電車の中で自分が独り言を言ったんじゃないかとどきっとすることもある。仕事をすれば気がつかないうちに自分の体力の限界を超えてダウンしていた。実のところ、彼らと大差はない。それでも何とか医者や薬のお世話にならずに済んでいるのは、どこか不真面目だからだと思う。最善を尽くしたって、身の丈以上のことはできないと諦めている。だんだんと他人とは違って当たり前だし、完璧に健常な人なんていやしない、ということが実感できるようになってきたのも大きい。
このことを自分で実感できるように導くのは難しい。山本先生のように、ひたすら話を聞き、自分の考えを話せるようにすることが一番いいのかもしれないけれど、それでも映画に出演されている3人の患者さんが亡くなってしまっている。

posted by amui at 23:12| Comment(0) | TrackBack(2) | 日本電影 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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「マン・オン・ワイヤー」ツインタワーの間を歩いた男
Excerpt: 「マン・オン・ワイヤー」★★★ フランス人フィリップ・プティ出演 ジェームズ・マーシュ監督、95分、2008年、イギリス                            ★映画..
Weblog: soramove
Tracked: 2009-08-19 07:53

「ラッシュライフ 」もっと学ぶ必要あり、で自分も戒める
Excerpt: 「ラッシュライフ 」★★☆ 堺雅人、寺島しのぶ、柄本佑、板尾創路出演 真利子哲也、遠山智子、野原位、西野真伊監督、122分 、2009年                     → ..
Weblog: soramove
Tracked: 2009-11-10 08:05
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